「いのちめぐる家」 オーガニック-ハウスビルド物語
この建物の建て主さんは、「ひきちガーデンサービス」というオーガニックの植木屋さんです。ご夫婦二人で自然素材で環境に負荷を与えない、庭づくりをされています。そしてきれいな花や樹木だけでなく、雑草や虫たちにも暖かいまなざしをもち、多様な生き物たちが集える「いのちのめぐる庭」を目指されています。
そのお二人が家を建てようとした時に選んだ工法や材料も、可能なかぎり自然の素材を使い、できるところは心をこめてご自分たちの手をかけていきました。「雨音堂」と名付けられたこの家は、人や生き物のつながりを大切にし、多くの人に育まれ、いのち巡る家に成長していきました。、
家は工務店が建てて完成させ、そこに引っ越しをすることが普通です。そして又、建築の時期や予算には限りがあり、広がる夢とはギャップがあります。しかし、本体の構造をしっかり作っておけば、完成を求めず今できることをしながら、生活を経験した上で、少しずつ家を直し充実させていくこともできます。
お二人は植物を育てるように、家を育てていきました。1999年の最初のご相談から現在まで、そんなお手伝いをさせていただきました。そしてその家という木に花が咲き、実が成り、そこに集まってくる鳥や虫や草たちの姿と出会えたことは、家を作る者にとって、嬉しいことでした。
☆ 建前
一般的な布基礎ではなく、柱が一本一本直下の基礎の上に立つ、「石場建て」という伝統工法です。
壁部には筋交いは使わず、柱に「貫」を通して固めていきます。大黒柱と対になる恵比寿柱は二本の木が螺旋状に絡み合った(元はひとつ)の檜です。こうした珍しい材も含め構造となる材は岡部材木店(飯能市)のものです。
☆ 土壁
壁は昔ながらの土壁で、壁土作りは欠かせない大事な工程です。
荒木田土という粘土に 大量のワラを切り、切ったワラと水を混ぜこみ、そのまま置いて寝かせます。するとワラは分解してセルロース化し、粘りのある壁土の材料となります。
木舞かき
自分たちは植木屋だから、と曳地さんたちは、間渡しのための篠竹を採ることから始めました。
そして竹屋さんから購入した真竹を竹割り器で割り、その竹で木舞をかいていきます。
荒壁塗り
デッキなども、できることは自分たちで
☆ 外観内観の変遷
竣工時、内外部共に壁はワラスサの見えるワイルドな荒壁でしたが、10年後に中塗りの上、漆喰の仕上げ塗りをしました。それまでの壁は、利休の茶室を思わせる寂びた風情を見せ、それはそれで味わいがありましたが、新しい白漆喰の壁(一部板壁)は緑に映え美しい姿に変身しました。
その後3年ほどの間に、北面に風徐室と車庫を増築(ご主人のデザイン)し、南面2階には月見台テラスを設置しました。
☆内部の変遷
竣工後も収納などの多くをご主人が手作りし、小さな増築、改装など少しずつ手を加えていきました。作家のお友達の作品も居心地のよい場所に納まっていきいきとしています。
「ひきちガーデンサービス」の庭と家の美しい動画を臼井健二さんが撮影されています。使いやすく考えられた手作りの、キッチンまわりの収納やコンポストボックス、本棚、庭の収納小屋など。
住む人が自らの手で愛情を持って作り大切に使っている様子は、こういう工夫とデザインが人の暮らしを、そして心を豊かなものにするということを、改めて思わせてくれます。
☆「ひきちガーデンサービス」の著書 のご紹介です。
「二十四節気で楽しむ庭仕事」
「雑草と楽しむ庭づくり」
「オーガニック・ガーデンのすすめ」
「虫といっしょに庭づくり」
「無農薬で庭づくり」
「オーガニック・ガーデン・ブック」
企画・共著:「原発をやめる100の理由」-エコ電力で起業したドイツ・シェーナウ村と私たち(「原発をやめる100の理由」日本版制作委員会)
耳を澄ます 縁を結ぶ
ときがわ
都幾川木建
ときがわもっけん
(旧高橋木造建築研究所)
木造建築士事務所/埼玉県知事登録 (6)第50号
一般建設業許可/埼玉県知事許可 (般-1) 第46608号